とよあけの自然 

ナガバノイシモチソウ ~最盛期には、かれんな花と捕虫のドラマを見せてくれます~

ナガバノイシモチソウの画像 

 市内には、全国的にも珍しい紅花のナガバノイシモチソウが自生しています。現在、日本で自生が確認されているのは愛知県のみです。本市のものは昭和43年(1968)に県の天然記念物の指定を受け、毎年8月上旬に一般公開され、多くの人々が見学に訪れます。
 ナガバノイシモチソウは、湧水地で栄養分の少ない弱酸性土壌の環境に自生するモウセンゴケ科の1年生食虫植物です。葉は、茎に互生し、葉身は3~10センチで表面に腺毛が密生しています。そこから分泌する粘液は誘引臭を出し、昆虫をおびき寄せ捕虫し、栄養分として補っています。
 自生地付近は、その環境条件から農耕地や住宅地としての利用に適していない土地であったため、開発の手を免れてきました。しかし、高度成長期における都市化の波は、湿地の環境を変貌させ、自生できる環境は著しく減少しました。
 絶滅の危機の中で、様々な保護活動に努力した多くの人々のおかげで、現在もその美しくかけがえのない姿を見せてくれます。次世代へ残すべき本市の貴重な財産として、今後も絶え間ない保護・保全が望まれます。

 

市史編集委員 浅井 常典