とよあけの自然 

ため池を掘る ~桟敷(さじき)池の地層~

ため池を掘るの画像

 市内の丘陵部には、あちらこちらにため池が見られます。これらのため池は、近世にかんがい用水の取水のため、人工的に掘られたものです。実は、ため池が掘られて以降現在に至るまで、ため池の底では、地層が堆積し続け、その中には、環境の変化を示す証拠が閉じこめられているのです。
 沓掛町にある桟敷池(写真1)にボートを浮かべてボーリングをしたところ、約45センチの地層(写真2)を得ることができました。桟敷池は寛永17(1640)年に開削されたといわれる池で、もし現在までに浚渫(しゅんせつ)等が行われていなければ、約360年分の地層が得られたことになります。この地層を顕微鏡で詳しく観察してみるとその中には、珪藻(けいそう)化石(写真3)が多く入っていました。
 珪藻化石を利用し、桟敷池から得た地層を見てみると、下位から10センチは池ができる前の東海層群の地層、次の5センチは池ができて間もない頃の地層、上位30センチは池に水が満たされ現在に至るまでの地層であることが分かりました。さらに、現在に近づくにつれ、次第に水質汚染が進んできている様子が読みとれるのです。

 

市史執筆員 宇佐美  徹