ゴマクサ~豊明に自生する希少な湿地植物~

日当たりのよい湿地に生育する非常に稀少な一年生草本です。愛知県内の湿地では、ほとんど見かけることができなくなりましたが、豊明市沓掛町小廻間のナガバノイシモチソウ保護地では、毎年数多くの個体が生育し、開花・結実が確認されています。名前の由来は、花や果実(蒴果(さくか):種子を内包する)の形がゴマ(Sesamum indicum ゴマ科ゴマ属)に似ているからです。
分類学的には、ゴマとは全く異なり、ハマウツボ科ゴマクサ属に属し、学名はCentranthera cochinchinensisです。8~9月ごろ、茎の上部の葉の付け根部分(葉腋:ようえき)に、1個ずつ2cm程度の黄色の花をつけます(ちなみにゴマの花は白色です)。花の形状は釣鐘型で先端は五裂し平開しています。茎は比較的硬く直立し、高さは50~60cmほどになります。葉は厚く葉柄がなく、葉の両面には短い剛毛が生えています。葉の付き方は、茎の下部では2枚の葉が向き合ってつき(対生)、上部では1枚の葉が交互に付きます(互生)。ゴマクサは一般に種子の休眠期間がく、発芽条件も限られ生育状況も不安定で、年によって出現する個体数の変動が大きいため、最も絶滅に近い湿地植物の1つかもしれません。なお、環境省レッドリストでは、絶滅危惧2類(VU)※に分類されています。
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文化財保護委員 鬼頭 邦英 広報とよあけ令和7年8月号 とよあけの自然掲載