タイワンウチワヤンマ~南方系のトンボでも日本の真夏は暑いようです~

タイワンウチワヤンマは台湾の名前が示すように南方系の卜ンボで、比較的近年分布を広げてきた新参者です。1990年代前半の分布の東限は紀伊半島(三重県)でした。愛知県で最も早い確実な記録は1999年と考えられ、豊明市で普通に見られるように定着したのは、2012~2013年ごろのようです。
南方系のトンボというと、暑さに強そうですが、日本の真夏は厳しいようで、止まる時の姿勢からそのことがうかがい知れます。普通に止まるときは水面に平行に、水平近い姿勢でとまります。ところが暑くなると水面に垂直に近い姿勢でとまります。この姿勢はオベリスク姿勢と呼ばれ、太陽に腹部を突き出すように向けることで直射日光に当たる範囲を狭くし、体温の上昇を抑える効果があると考えられています。また、翅(はね)が水面の上を通る涼しい風を受け止めることでも体温を下げているようです。南方系といっても、日本の真夏は暑いようです。
豊明市史(自然)執筆員 吉鶴 靖則(広報とよあけ 令和5年10月号 とよあけの自然掲載)