クズ

山野、市街地、空き地なとでよく見かけるつる植物で、マメ科クズ属に分類される多年生草本です。葉は3枚の丸形の小葉からなる大きな複葉が太いつるから交互に伸び、花は赤紫色の蝶形の小花が房状に密集していて、8~9月頃に下から順次開花していきます。クズは、古事記や日本書紀にも記載があるほど古くから日本人には身近な野草で、「秋の七草」の一つでもあります。外皮を除いた根を細かくし乾燥させた葛根(かっこん)は解熱・発汗作用があるため葛根湯や葛󠄀湯などの漢方薬として、また根に含まれる良質なデンプンを葛餅や葛切りなどの和菓子の原料として利用してきました。しかし、クズはつる性で周りの植物に覆いかぶさり生育範囲を拡げるため、クズに覆われた植物を枯死させてしまい、その地域の生物多様性の低下の原因にもなっています。ちなみに、海外では繁殖力が極めて強く駆除がなかなか難しいことからグリーンモンスターとよばれ、侵略的外来種(既存の生態系や人間の活動に甚大な影響を及ぼす外来生物)にも指定されている有害植物です。
文化財保護委員 鬼頭 邦英(広報とよあけ 令和5年9月号 とよあけの自然掲載)