10代のワクチン接種が開始されるなど、接種が進んでいる一方で、根拠が不明で真偽が明らかでない情報がインターネットやSNSなどで拡散され、不安を感じている人も多いと思います。今回は、自分や家族、地域を守るために有効と考えられるワクチン接種について、藤田医科大学病院感染症科の土井洋平教授にお話を伺いました。 

 

専門家が答える、新型コロナワクチン接種Q&A

はじめに

新型コロナウイルスの流行が厳しい局面を迎えています。今も感染した多くの方々が高熱、激しい咳、息苦しさなどに苦しんでいらっしゃいます。また、感染力が強い変異株が広がってしまった影響は大きく、家族の誰かが感染してウイルスが家庭に持ち込まれると、家族全員が感染してしまうケースが多く見られます。感染予防のために以下の二点はぜひとも守っていただくよう、ご協力をお願いいたします。
―同居していない人とはマスクなしで喋らない(昼夜問わず、飲食時が最も要注意です)
―マスクは不織布マスクを使う(ウレタンマスクだとウイルスが通り抜けます)
その上で、ワクチンは新型コロナウイルスによる被害をさらに防ぐための強力な武器です。2回接種することで、発症、重症化、死亡のリスクを大幅に下げることができます。以下、ワクチンについてよくいただく質問と、それに対する回答を紹介します。

 

Q.結局のところワクチンはどれくらい効くのですか?

A.現在日本で使われているmRNAワクチンはいずれも極めて有効で安全なワクチンです。2回接種しておけば、重症化したり死亡したりすることはほとんどなくなります。実際、入院を要している人はほとんどがワクチン未接種か、まだ1回しか接種していない人です。(8月31日現在)ただし、接種から半年程度を経ると、重症化や死亡は引き続き防ぐことができますが、感染や発症の予防効果は少しずつ下がってくるようです。「ワクチンが終わった後も感染対策をしてください」とお願いしているのはこのためです。

 

Q.抗体価が3か月で下がると聞いたので心配なのですが・・・

A.ワクチンによる免疫の一指標である抗体価は、2回目接種後1週間程度で最大となり、その後下がってくることは多くの研究で示されています。ただ、ワクチンの効果には他の免疫も関与しており、上に書いたように実際に半年間以上ワクチンの効果があることが分かっています。

 

Q.長期的な副反応を心配しなくてよいですか?

A.新しい感染症に対する新しいワクチンであることは確かですが、安全性については開発時に厳しい審査が行われ、現在も新たな副反応の監視が続いています。mRNAワクチンは接種後数日で分解してしまうため、長期的な問題が生じる可能性は非常に低いと考えられています。一方で、感染してしまうとしばしば長期的な問題(後遺症)が起きてしまいます。現在の流行状況では、接種しないリスクが接種するリスクを大きく上回っています。

 

Q.中高生はワクチンを打つべきですか?

A.新型コロナウイルスは当初は未成年の感染者は少なかったのですが、感染者が増加したことや、感染性の強い変異株に置き換わったことで、未成年の感染者が増えています。未成年が重症化することはまれですが、未成年が家庭外で感染することで大人を含めた家族が感染して重症化してしまうことがあります。また、中高生の接種率が高くなれば、学校での感染が減り、休校しなければならない事態も減りますので、接種できる時に接種することをお勧めします。

 

Q.妊婦はワクチンを打つべきですか?

A.妊婦さんについては、赤ちゃんの健康も考え最大限の安全確保を優先することが大原則です。そのうえで、妊婦さんが感染すると重症化や早産のリスクが高まること、また妊婦さんへのワクチン接種の安全性が世界的に確立してきたことから、現在では週数を問わず全ての妊婦さんが接種を受けることが奨励されています。授乳中についても接種が勧められています。

 

おわりに

高齢者の方は接種がほぼ完了したことで、ほとんど発症、入院することがなくなりました。ここからは中高年だけでなく、若年層の多くに接種を受けていただくことで、自分、家族そして地域を守れますし、普通の生活を取り戻すことにもつながります。ぜひ前向きに検討していただけることを願っています。

 

土井洋平教授のプロフィール

1972年生まれ。日本感染症学会感染症専門医。名古屋大学医学部卒業後、国立感染症。土井教授写真研究所で研究員として勤務。2008年ピッツバーグ大学医療センター准教授などを経て、2017年藤田医科大学医学部微生物学教授就任。2018年より感染症科教授を兼任。2021年2月よりピッツバーグ大学医学部教授。2021年8月より藤田学園新型コロナウイルス対策本部長。

 

 

 

 

 

 

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