5月17日
5月中旬から、市内随所で撮影が開始された。豊明駅、前後駅で夜間の撮影があるというので出かけてみた。家出したおばあちゃん(吉行和子)を嫁(原田美枝子)が迎えに行くというシーン。自動券売機の前で立ちすくむおばあちゃんの前を通行人が一斉に通って行く。わずかニ十秒ほどのシーンだが、何回かのテストを繰り返した。エキストラの数が足りなくて、学校帰りの女子高校生をお願いして、て本番撮影。松井監督の「カット」の声でやっと撮影終了ができた。
次は場所をかえて前後駅での撮影、嫁(原田)とおばあちゃん(吉行)が駅から自宅へ帰るシーン。急行電車をバックに二人の後姿を撮影する。わずか、三カットに四時間をかけた。改めて、映画づくりの大変さを感じた日であった。
5月21日
撮影の川上皓市さん、スクリプター(記録)の堀ヨシ子さんから撮影の合間にお話しを伺うことができた。カメラマンの川上さんは、今からニ十数年前、東陽一監督の「サード」でデビューした。この作品は、その年のキネマ旬報ベスト1に輝く。その後も「もう頬づえはつかない」「四季奈津子」「橋のない川」など、最近作は、昨年公開された「スリ」。カメラを通して俳優さんを見つめていると日々変化していく表情に、この仕事のおもしろさを感じていると話してくれた。
スクリプターの仕事は?と堀さんに尋ねたところ、撮影された全カットの記録することや、別々に撮ったカットの芝居や衣装、小道具が、間違い無くつながっているかを確認するのが仕事であることを説明してくれた。映画は、俳優や監督だけで作られているのではなく、今日、話を聞いた人以外にも多くの人たちの力で創作されていることが良く分かった。身近での映画撮影に接した経験が、日本映画を見直す良い機会になった。