とよあけコラム花マルシェりょうふち見ることができます。特に多いのは、葉の両縁に斑の入ったフイリヤブランでしょうか。も耐陰性にも優れ、葉が低い位置で、株が横に広がっていくので、フルシーズンでグランドカバーに利用できます。また、他の花が少ない真夏に花を咲かせ、花が終わると黒々とした美しい種子をつけていきます。丈夫で長生きな上に変化に富んだところは、お庭づくりにはとても重宝する存在です。さらに、ヤブランの仲間は総じて根に薬効成分を含み、古くから漢方薬に使われています。「なんか、ヤブランって何でもイケちゃいますね〜」そうですね。ふだん見通り過ぎちゃうけど、知ってみると結構重要な植物に見えてきたでしょ? ところで、ヤブラン属の学名はLiliope(リリオぺ)です。リリオぺはギリシャ神話に登場する精霊で、なんと、スイセンにされてしまったナルシッサスを生んだ母親だそうです。真冬の花スイセンと真夏の花ヤブラン。全くかかわりを感じられない二つの花が、こんなところでつながってました。それでは皆さん、熱中症にはくれぐれもご注意下さ〜い! 晶彦 <大いに暑い>と書いて大暑。梅雨を過ぎてから何度「暑〜い」と言ったかわからないけれど、なんといっても一番暑いのがこの時季です。「ええ、日本列島はスッポリ高温高湿の太平洋高気圧に覆われてしまって、日陰でさえちっとも涼しくないですもんね〜」「もう山へ避暑にでも行かないとやってられないよ〜!」そうですね。では、今回は夏の山林で花を咲かせるヤブランのお話でもさせていただきましょうかね。かけても、それほど派手ではないので何となく ヤブランはキジカクシ科ヤブラン属の一種です。ランの名を含んでいますが、ヤブランはランの仲間ではありません。「で、どうして名前が〇〇ランなわけ?」それは、ヤブランの葉がシュンランの葉に似ているからのようです。両者は自然の生息環境も近いので、花の無いときにヤブランの株を見つけたら、一瞬、シュンランと見間違えることもあります。ただし、花が咲くと全くの別物ですけどね。 ヤブランの仲間は、中国の黄河以南から東南アジアにかけての広い地域における標高1,400m以下の山間部の森林に生息し、日本にはこのうち3種が自生しています。その代表種であるヤブランは、主に本州山林の地面で見かけることができ、7月下旬から秋にかけて次々に紫色の小輪花を着けていきます。「えっ、山に生えてるの?でも公園とか、近所のお庭でも良く見かけるよね。」たしかに。ヤブランからはいろいろな園芸品種が作られており、野生種を探さずとも、比較的容易に生活圏でふ 執筆/愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田ようえきさく か真夏に咲くフイリヤブラン(にゃんたっちゃぶる/PIXTA)ゴマクサの種子ゴマクサの花と蒴果ゴマの種子ゴマの花と蒴果 ヤブランは常緑の多年草で、また耐暑性に34 広報とよあけ | 2025.8 |写真/筆者撮影蒴果蒴果 日当たりのよい湿地に生育する非常に稀少な一年生草本です。愛知県内の湿地では、ほとんど見かけることができなくなりましたが、豊明市沓掛町小□間のナガバノイシモチソウ保護地では、毎年数多くの個体が生育し、開花・結実が確認されています。名前の由来は、花や果実(蒴果:種子を内包する)の形がゴマ(Sesamum indicum ゴマ科ゴマ属)に似ているからです。分類学的には、ゴマとは全く異なり、ハマウツボ科ゴマクサ属に属し、学名はCentranthera cochinchinensisです。8〜9月ごろ、茎の上部の葉の付け根部分(葉腋)に、1個ずつ2cm程度の黄色の花をつけます(ちなみにゴマの花は白色です)。花の形状は釣鐘型で先端は五裂し平開しています。茎は比較的硬く直立し、高さは50〜60cmほどになります。葉は厚く葉柄がなく、葉の両面には短い剛毛が生えています。葉の付き方は、茎の下部では2枚の葉が向き合ってつき(対生)、上部では1枚の葉が交互に付きます(互生)。ゴマクサは一般に種子の休眠期間が長く、発芽条件も限られ生育状況も不安定で、年によって出現する個体数の変動が大きいため、最も絶滅に近い湿地植物の1つかもしれません。なお、環境省レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類されています。 文化財保護委員 鬼頭 邦英と よあけの自 然ゴ マク サ〜 豊 明に自 生する希 少な湿 地 植 物 〜
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