広報とよあけ 令和7年1月1日号
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と花よあマけルシェコラムツバキとサザンカ かんやまとたけるのみことまたかへりみむ業なり平ひらのお兄さん、在原行平の歌です。「お歌の意味みをしありわらのゆきひら天てんの皇う」に「昔日本武尊向東之歲、停尾津濱而進是これの時に、一ひとのつつ剣るぎを解ぬきて、松の下に置きたまふ…)有あり間まの皇み子こが「い磐は白しろ乃の濱はま松まつ之が枝え乎をひ引きむ結すびま真さ幸きく有あら者ば年末から年明けには門松を飾るのが日本の風習ですね。「うん、昔と比べて門松もあまり見なくなっちゃったけどね〜」そうですね。年々日本の伝統文化や風習も失われつつあるようで、はどのようですの?」はい、これは行平が因いな幡ばのか守みちょっと寂しい思いがします。松は常に葉が青々としており、これはたとえ寒においてもその姿は変わりません。その不動なる姿は邪じゃ気きをもはねのける存在として、中国や日本でこ神う々ごうしいものとして扱われています。マツはマツ科マツ属の総称で、北半球の広い範囲に原生種があります。日本にもクロマツ、アカマツが自生し、古くは『日本書紀』巻第七「景けい行こう食。是時、解一劒置於松下…」(昔さきに日本武尊、あ東づまに向いでましし歳としに、尾お津 つの浜にと停どまりて進食す。と、この時代、すでに旅の休息をとる街路樹として登場しています。「えぇっ、そんな前から?江戸時代の松並木どころではないね〜!」ええ、東海道を旅する人々が昼の休みをとったあの光景は万葉の時代以前からあったのかもしれないですね。万葉集にはマツの歌が79首詠まれ、巻第二141番には、謀むほ反んの罪で白浜に流されていく亦還見武」と、松の小枝を、円を描くように結び、再び戻ってこられるように祈願する様子が詠われています。その後もマツは多くの和歌に登場していきますが、粋いきなところでは『古こき今んし集ゅう』365番「たちわかれ稲葉の山の峰に生おふるまつとしきかば いまかへりこむ」という歌があります。「あ、これ百人一首にある歌よね?」そうです、(現代の鳥取県知事)に任ぜられ、都を離れるときに詠んだ歌です。「これでお別れですが、稲いな羽ばの山に生はえる松とかけて『待ってますよ!』という声が聞こえてきたら、すぐに戻って来ますよ!」という内容です。ところで、マツにもちゃんと花が咲きます。        ちょっと字数がはみ出るので、このお話は別の機会に。では、今年もよろしくお願い申し上げます。執筆/愛知豊明花き流通協同組合理事長永田   晶彦とよあけの自然〜冬を彩る花〜クロマツの花(taka15611/PIXTA)ツバキサザンカきょ し32広報とよあけ| 2025.1 | ツバキ〔ヤブツバキ〕(Camellia japonica L.)とサザンカ(Camellia sasanqua Thunb.)は、どちらも同じツバキ科ツバキ属の樹木で、日本原産の常緑広葉樹です。ちなみに、チャノキ(Camellia sinensis(L.) Kuntze.)も同じ仲間です。ツバキとサザンカは、見た目もそっくりで、開花時期もサザンカの方がやや早く咲くもののほぼ同じ冬季に開花するため、見分けることが難しいですが、開花後の花の散り方は異なります。ツバキ、サザンカともに離弁花なのですが、前者の花弁は根元でつながっているため花ごと落ちるのに対し、後者の花弁は一枚一枚散っていきます。また、ツバキは全体的に筒状に開花しますが、サザンカの花は平開し花弁がそり返っています。葉はどちらも厚くクチクラ層が発達しているため光沢があります(ツバキの方が大型です)。また、ツバキの葉の周縁は鋸歯(ギザギザ)が浅くあまり目立たないのに対し、サザンカの葉の周縁部には細かい鋸歯が目立ちます。なお、ツバキやサザンカは、冬季に開花するので寒冷地の樹木と思われがちですが、ツバキ科の植物は熱帯域から温帯域にかけて分布しています。ちなみに、ツバキの種子を押しつぶしてしぼった椿油は、食用油をはじめスキンケアや育毛剤などの化粧品に用いられています。文化財保護委員 鬼頭 邦英写真/筆者撮影

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