広報とよあけ 令和6年10月1日号
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と花よあマけルシェコラム 用されています。歴史への登場においても、狩か野 のうムラサキシキブの実みの着いた枝が描かれ「延えんぽ宝う七年九月十六日むらさき志しきふ」と付記があることから、江戸時代前期には、すでにムラサキシキブの名で呼ばれ、この実みを観賞する習慣があったことがう窺かがわれます。「そうですか〜。ところでこの花と紫式部の御関係は?」いや〜!実は花のムラサキシキブと紫式部ご本人には接点がありません。実みが美しい紫色であるため、江戸時代以前の誰かが紫式部の名を頂戴し名付けたのだといわれています。「へぇ〜。源氏物語の女性に、いろいろな花の名前を付けた紫式部だけど、数百年の後、ついにはご自分の名前がお花の名前になろうとは思っていなかったでしょうね!」ははっ、うまいこと言いますね〜。『源氏物語』は世界で最も知られている日本文学の一つですが、これは同時に平安期の重要な花文化資料でもあります。花の文化探求を通じて、紫式部とお近づきになれるなんて幸せなことです。そんな思いも感じながら、ムラサキシキブの枝を手に取って、ひとつ生けてみたいものですね。執筆/愛知豊明花き流通協同組合可悲な しし かるらむ」(『千せん載ざい和わ歌かし集ゅう』巻第七)は、初「なきよわる籬まが能きの虫むしもとめが多た起き  秋あき能 のわ別かれや秋の頃、久しぶりに帰京してきた幼友達が、まだ冬にもなっていないのに、再び地方へ旅立ってしまうことを悲しんだ歌。寒かん露 ろも近づき、とても過ごしやすくなりましたが、あまりてなどか人の恋しき季節ですね〜!「おやおや、今回の出だしはちょっと感傷気味でいらっしゃいますのね?」はい、この時季はどうも情緒不安定になりがちでして。「ところで、このお歌はどなたがお詠みになったものですの?」冒頭の歌は紫式部が詠んだものです。「お、久しぶりの登場だね?」ええ、でも紫式部ご本人の話についてはここまでで、以降はムラサキシキブという花のお話に替えさせていただきます。ムラサキシキブは、シソ科ムラサキシキブ属に分類される落葉低木で、日本全国の山野で見られた自生種です。しかし、現在ではその数が大きく減少し、絶滅危惧種に指定されています。普段我々が目にするものの多くは、その園芸種や近縁種との交雑品種で、これらをすべて合わせてムラサキシキブと呼んでいることが多いです。ムラサキシキブの観賞価値は、その花の可愛らしさもさることながら、やはりそれが実みになった姿にあります。6〜7月ごろに咲いた花は、その後結実し、10月初旬にはあでやかな紫色になります。実一つ一つは小さいものの、このような発色は独特で、生け花やフラワーアレンジによく利常つね信 のぶ筆の『草そう花かぎ魚ょ貝かいち虫ゅう類るい写しゃ生せい』九月二巻之内に、理事長永田   晶彦とよあけの自然34広報とよあけ| 2024.10 |ムラサキシキブの実(marika/PIXTA)土手に生育しているオヒシバ        オヒシバ(雄日芝)は、イネ科オヒシバ属の一年生雑草で、本州以南では農耕地以外の道端や庭先でも普通に見られます。日当たりのよい場所を好み、ほかの雑草が生えないような、踏み固められて、土がむき出しになった地面で生育環境の厳しいグラウンドにもよく見られます。 生育期間は4月ごろから10月ごろまでと長く、その間に何世代もの発生を繰り返します。繁殖力が強く増殖速度も速いため、野菜畑などでオヒシバがよく繁茂します。カメムシなどの害虫のすみかとなり、作物への被害が出ます。 生育環境により草丈は異なり、短いものでは30〜80cmほどになります。葉は細長くやや硬めで、縁には柔らかい白い毛が生えています。茎が分岐して株立ちし、ひげ根を強く張るため引き抜くのは困難です。 8月ごろ茎の先端に数本の緑色の穂が放射状に出ます。穂が見え始めてから2週間で種子が形成されます。 除草剤散布により枯らしますが、近年では除草剤で枯れなくなり、オヒシバを枯らす効果のある除草剤が開発されています。豊明市史(自然)執筆員 小笠原 昇一写真/筆者撮影グラウンドでも、畑でもどこでも増えて困る雑草オヒシバ

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