広報とよあけ 令和6年4月1日号
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筆者撮影鳥の中には分布域が狭くなる種もいれば、広くなる種もおり、リュウキュウサンショウクイはその動向が注目されている種です。近年分布域を拡大中のようで、北進や東進しているのではないかと注目されています。愛知県では2016年に豊田市岩倉町で初めて記録され、2019年の岡崎市扇子山が2例目、2021年の豊明市二村山が3例目の記録と思われます。よく似た鳥にはサンショウクイがおり、リュウキュウサンショウクイとのお互いの関係は別種ではなく、亜種という位置付けでした。しかし、最新の研究から今後は別種として扱われるようです。違いはサンショウクイでは背面の灰色が薄いのですが、リュウキュウサンショウクイでは非常に濃く、ときに黒く見えるほどです。ただし、個体差や雌雄差があり、見分けにくい場合があります。もう1つの特徴は初列風切の長さで、サンショウクイよりもリュウキュウサンショウクイの方が短いことがあげられます。豊明市史(自然)執筆員          吉鶴靖則リュウキュウサンショウクイ〜これから 増えるのでしょうか〜の ぶんしゃくなんげ き   なつのはじめあかぼししゅう い  わ  か しゅうかん こうにょ かく ほう しもののなさくらいろひとところふじわらのたかみつか だん ち きんしょうふゆ き屋久島洋上アルプスに咲くヤクシマシャクナゲ(屋久島サル/ PIXTA)35二村山で2021年3月24日に記録されたリュウキュウサンショウクイのメスと思われる個体    春分を越えて季節は春の真っただ中です。お天気が良く暖かい日には近くの野山に散歩に出かけるのも良いですね?「うん。咲いているお花の自生地に行ってみるのも悪くないわね!」そうですね。今月中旬頃から5月にかけてはシャクナゲの開花時期なので、前もって場所と花の時季を調べてから訪ねれば、きっと普段の生活で見かける花の姿とは違う景色を味わうことができますよ〜。「えっ!シャクナゲって『洋花』って感じだけど、日本原産なの?」はい、今我々が目にするシャクナゲの多くは19〜20世紀に欧米で育種された、いわゆる西洋シャクナゲなので、シャクナゲを欧米のものと思ってしまうのも無理はありません。しかし、シャクナゲの原産地は一部北アメリカとヨーロッパに存在するものの、主たる地域はアジアからオセアニア北部で、日本もその一つです。 シャクナゲは日本ではツツジ科ツツジ属のうちシャクナゲ亜属に含まれる種および「その交配種で花が枝先に房状に多数集まって咲くもの」を指します。が、シャクナゲという分類は学術的に統一されたものではないので、欧米での分類とは少々違いがあります。「うわ〜、なんか細かそう〜!」そうなんです。シャクナゲを植物分類学の視点で理解しようとすると、とても複雑な話になってしまうので、ここでは『ツツジの仲間』くらいに理解しておきましょう。 日本国内の記録によれば『拾遺和歌集(寛弘2)』巻第七、物名において如覚法師(藤原高光)が詠んだ歌のタイトルとして「さくなむさ」の表現でシャクナゲが登場することから、10世紀以前には親しまれていたと推測されます。また『花壇地錦抄』巻三、冬木之分には「柘南花 木 夏初 葉ハもつこくのごとく花ハ櫻色一所ニあつまりさく」と、具体的に表現され、江戸中期には園芸的に愛好されていたことがうかがわれます。 日本にも固有種があり、すでに日本人の生活と深くかかわっているシャクナゲですが、元来その多くは暑さに弱く、また日本に比べ冷涼なヨーロッパで開発された品種も耐暑性は改善されておらず、太平洋モンスーン気候を有する本州以南の平地では夏越しが困難でした。しかし、暑さに強い亜熱帯種の赤星シャクナゲを台木にして、目当てのシャクナゲの芽を接ぎ木することで、その耐暑性が向上し、平地に暮らす我々でも栽培ができるようになったんですね。 これから初夏に向けて、山菜取りもできるし、シャクナゲを探して、山歩きにでかけてみませんか〜!               執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦初列風切{

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