タイワンウチワヤンマ〜南方系のトンボでも日本の 真夏は暑いようです〜写真は筆者撮影 タイワンウチワヤンマは台湾の名前が示すように南方系のトンボで、比較的近年分布を広げてきた新参者です。1990年代前半の分布の東限は紀伊半島(三重県)でした。愛知県で最も早い確実な記録は1999年と考えられ、豊明市で普通に見られるように定着したのは、2012〜2013年ごろのようです。 南方系のトンボというと、暑さに強そうですが、日本の真夏は厳しいようで、止まる時の姿勢からそのことがうかがい知れます。普通に止まるときは水面に平行に、水平近い姿勢でとまります。ところが暑くなると水面に垂直に近い姿勢でとまります。この姿勢はオベリスク姿勢と呼ばれ、太陽に腹部を突き出すように向けることで直射日光に当たる範囲を狭くし、体温の上昇を抑える効果があると考えられています。また、翅が水面の上を通る涼しい風を受け止めることでも体温を下げているようです。南方系といっても、日本の真夏は暑いようです。豊明市史(自然)執筆員 吉鶴 靖則はねまきのちゅうあき くさ の ぶはま ぎくはな もと しろ うち きに さいと35 彼岸を過ぎ清々しい気候になりましたね。そろそろ菊の蕾がほころび始め、中旬あたりからは、全国あちらこちらで菊花展が始まります。「やっぱり日本の花と言えば菊だよね〜皇室の御紋にもなってるしね!」そうですね。ところで、一般にいう菊とはキク科キク属にあるイエギクの仲間を指しますが、同じキク科にあって、キク属ではないものに、ハマギクという花があるのを知ってますか?「ウーン。聞いたことあるような?でも、どんな花かわかりませんね〜。」そうですか?あまり多く見かける花ではないので、ご存じでない方も多いのも無理はありません。 ハマギクはキク科ハマギク属の多年草で、白いマーガレットを大きくしたような花です。延宝9年に脱稿した『花壇綱目』の巻中秋草能部には「濱菊 花䑓白内黄咲く・・・」とあることから、ハマギクの栽培は江戸時代初期に始まっていたと考えられます。ただし、ハマギクは日本の固有種なので、自然界にはずっと前から存在していたことになります。原生地は青森県から三陸を経て■城県までの太平洋岸で、現代では日本海側や本州南岸でも見かけられる所があります。「えっ!固有種?確か菊は中国からの渡来だと言ってたよね〜?すると、ハマギクは菊より日本らしい花ってことかね?」はは、確かに、そう言ってもおかしくない生い立ちですね。ハマギクの生息する場所は三陸海岸に代表される太平洋の荒波を受ける場所です。その波しぶきと吹き上げる強風に耐えられるよう、草丈が伸びず、葉はベンケイソウのように多肉質で、海辺の岩場に横広がりに群生しています。 新聞報道によると、平成9年10月に当時の天皇皇后両陛下が三陸に宿泊された際にハマギクを観賞され、後日そこから両陛下に贈られたということです。さらにそれ以前、上皇后美智子様が皇后陛下であった時代にお書きになった歌集『瀬音』には、平成3年に天皇明仁陛下がハマギクを愛おしまれるご様子が歌われています。したがって菊同様、ハマギクも皇室にご縁がある花なんですね。では、最後にその歌をご紹介し、今回は失礼します。「わが君の いと愛でたまふ 浜菊の そこのみ白く 暗闇に咲く」(「瀬音」皇后陛下御歌集/平成9年大東出版社) 執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦潮風に耐えながら成長するハマギク画像:E_NUMATA/PIXTA(古くから見られたウチワヤンマ)水平に近い普通の静止姿勢垂直に近いオベリスク姿勢(新参者のタイワンウチワヤンマ)
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