近年よく目立つようになったセイヨウオオバコ筆者撮影 セイヨウオオバコは、オオバコ科オオバコ属に分類される植物です。和名のオニオオバコですが、日本に自生するオオバコより大形です。原産地はヨーロッパとアジア北部、アジア中央部の大部分です。 日本では北海道から沖縄まで移入分布しています。 セイヨウオオバコは多年生の草本で、ロゼット状に葉をつけます。花は穂状花序で、花の色は緑がかった茶色。各花は紫色のおしべを持ち、花茎は直立し、長さは70㎝程度になります。 土壌の貧弱な道端や踏み付けの多いところでも生育します。世界各国で帰化し、地域によっては侵略的外来種として扱われています。 オオバコ属植物の種子は水に濡れると、粘着性のゼリー物質を出します。水に濡れると膨脹して細胞壁を破壊し、ゼリー物質となって細胞外に放出されます。これらは、発芽に必要な水の保持を図ると同時に、ゼリー物質の粘性によって靴底などに付着するのに役立っており、踏まれて分布を広げます。豊明市史(自然)編集委員 小笠原 昇一じょろうめしジョロウバナしたごうおみなえししるわ かんろうえいしゅうおんな め しかげろうわたどのじょろうみなもとのしたごうかおる35 「芽之花 乎花■花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花」 (萩の花 尾花■花 なでしこの花をみなへし また藤袴 朝顔の花)は万葉集に登場する山上憶良の歌。この7種の花の名前を連ねて「秋の七草」と呼ばれていますよね?「おいおい、この夏の盛りに秋の七草っていうのも何か季節外れな話だね!」ええ。あたりはまだ暑さ猛々しい最中なので、そう思われるのもごもっともですが、8月に入り1週間も経てば、もう立秋です。「ああ、そうでした。季節の入れ替わりは人知れずやってくる感じね〜!」はい、なので、秋の七草とは言うものの、現代人にとっては、その多くは夏の花のイメージが強いのではないでしょうか?公園の端々ではもうオミナエシが咲き乱れていますよね? オミナエシはオミナエシ科オミナエシ属の一種で、中国から日本にかけての温帯域を中心に生息する多年草です。野生種でありながら、鮮やかな黄色の小花を房状に沢山着けるので、古くより観賞の対象となってきました。万葉集には、冒頭の秋の七草以外にも「手取者 袖并丹覆 美人部師 此白露尓 散巻惜(手に取れば 袖さへにほふ をみなへし この白露に 散らまく惜しも)」など14首に登場し、その美しさと香りの強さが詠われています。また、源氏物語にも、『蜻蛉』において、源氏の息子薫が明石の中宮を訪ねた折「女郎花 みだるゝ野辺に まじるとも 露のあだ名を 我にかけめや」と、渡殿に集まる女房たちの華やかさをオミナエシに例えるなど、いくつもの場面で見うけられます。「美しい花なのに、どうして女郎なんて漢字をあてたのかしら?」やっぱり、そう思っちゃいますよね〜!これについては『和漢朗詠集』で源 順が「華色如蒸粟俗呼為女郎…(花の色は粟の蒸する如し、俗に呼ばって女郎と為す…)」と記しています。この時代に米の代わりに粟を炊いたものを女郎飯と書き記したようで、これにオミナエシの花のイメージが似ていたので女郎花となったようですね。さらにこの女郎飯を通俗的に「女郎飯」と呼称しており、この音が「オミナエシ」に変化したということです。「へえ〜、そうでしたか!ところで、また順さんのお出ましですね?!」ええ、彼は日本の花の名づけ親のような人ですからね。きっと、いつかまた、この場所に登場してくれると思います。 では、今回はこれにておしまい。オミナエシの花は涼しくなるまでズーっと咲いているので、見かけたら眺めてみてくださいね! 執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦秋まで咲き続けるオミナエシ(画像:マサ/PIXTA)草むらの中に生育するセイヨウオオバコ
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