広報とよあけ 令和5年6月1日号
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シャシャンボ〜里山のブルーベリー〜写真は筆者撮影 市内の雑木林には白い花の咲く木が多く、このシャシャンボもその一つです。ツツジ科の常緑低木で、6〜7月にスズランに似た釣鐘状の花が枝先に並んで咲きます。ひとつひとつの花は5㎜ほどの大きさしかありませんが、深緑色の葉とのコントラストでとても目立ちます。 秋になると、白い粉をふいた直径5㎜程の丸い紫黒色の果実が実ります。写真からおわかりのようにこの実はブルーベリーによく似ています。ともにツツジ科スノキ属に分類される近縁種なのです。そしてブルーベリー同様シャシャンボの実は食べられますので、かつて野山を遊び場所にしていた年配の方々は食べた経験がおありのことと思います。二村山の自然観察会でも時期になるとシャシャンボの実を摘んで賞味し、素朴な里山の味覚を楽しんでいます。 シャシャンボと出会うには、本種が好む日当たりが良い明るい林縁を探すのがお勧めです。林内にもありますが、花のつく枝が光を求めて手の届かない高い場所にしかないことが多いようです。豊明市史(自然)執筆員         浅野 守彦きんもう ず い ひ す いらんかんなかむらてきさいぎょくさんぎ ぼ しぎょくさんあいしょうぞくにいうぎ ぼ う しぎょくさんくわいちめいはくくわくせんしゅユーザン33 6月ともなると夏の日差しは一層厳しく、お花を眺めながら散歩するだけでも、時折日陰で休みたくなります。日陰というと植物の育ちづらい場所のようなイメージがあるけれども、元来日本は山間渓谷の多い国土のためか、日陰を好む植物がた〜くさんあります。「うん、茶席に向かう露地に植えられているものはその代表だよね?」その通り!うまいこと言いますね。その中の一つがこれから初秋に向かって咲くギボウシです。 ギボウシは中国四川省から日本にかけての温帯地域の山間渓谷に生息するキジカクシ科ギボウシ属に含まれる種の総称で、日本には多くの固有種があります。晩春から初夏に葉が展開し、その後に花が咲き始めます。花の色は品種によって違いますが白から紫色の色幅に収まり、品種によっては良い香りが楽しめます。しかし、ギボウシの楽しみは花よりも、葉の姿で、放射状に平たく広がるその姿には趣が感じられます。葉の大きさは小葉のものから大葉のものまで、葉の色は薄黄色から濃緑色さらに銀葉のものもあり、また、品種によって葉に様々な斑模様が入ります。暑いさ中、日陰で一息つきながら楽しめる、日本の夏にふさわしいお花ですね。 ギボウシの名称は、花の蕾の形が旧日本橋欄干等の頭部に備えられた擬宝珠に似ていることから、そう呼ばれるようになったようですが、『訓蒙図彙』(寛文6年、中村惕斎)巻二十-草花の部には「玉簪 俗云ぎ本うし玉簪花 一名白鶴仙」とあり、江戸初期以前の正式名称は玉簪であったことがわかります。玉簪はもともと中国名で、現代中国でもギボウシの正式名称は玉簪(翡翠のかんざし)です。玉簪の名称は、伝説によると、漢の武帝が愛妾の李夫人の髪にこの花を挿し、その後宮中の女官がこれをまねて、この花を翡翠のかんざしの様に髪に飾ることが流行り、こう呼ばれるようになったと言われています。「日本に固有種がたくさんあっても中国の名前で呼ばれてたんだね〜?」そうですね、江戸初期の時点で、文化レベルでは日本がリードしている面が多々あったと思いますが、やはり本草学の分野では日本は中国を手本にしていたため、これもそれに従ったのでしょうね? おっと、いつの間にか字数がいっぱい!ではギボウシのお話はこれにて終了。皆さん熱中症にお気をつけ下さいね〜!             執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦愛知とよあけ花の文化園シェードガーデンのギボウシʻ寒河江ʼ画像提供:愛知豊明花き流通協同組合 食べられる果実スズランに似た花

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