広報とよあけ 令和5年5月1日号
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ご 筆者撮影せいきょうがい ノボロギクは、キク科の越年生または一年生の広葉雑草です。和名は「野に生えるボロギク」という意味です。 茎は中空で、高さ20〜40㎝で直立、多数に分枝しています。植物体はうす緑色から赤紫色で、子葉は長楕円形で、葉先はややとがっています。成葉は互生し、不規則に羽状の切れ込みがあります。 開花は通常5〜8月、温暖な地域では一年中見られます。花は1㎝程度の頭状花序で、黄色い筒状花だけの花をつけます。 世界中の寒冷地から亜熱帯に分布します。日本では明治初期にヨーロッパから入り、北海道から沖縄まで全国に分布します。 耕作地では、畑、果樹園、転作水田によく見られ、道端や空き地にも自生します。 乾燥した畑では、多数の種子が広がり、強害雑草となることがあります。過去には血止めに効くということで、鼻血などの際に使用さましたが、今日はピロリジジンアルカロイドに毒性があり、下痢や吐き気をもよおします。豊明市史(自然)編集委員        小笠原 昇一毒があり、強害雑草になるノボロギクあんそくこうめいぼくせんだいはぎあんそくこうさんかへいしおアンシーシァンズー東山動植物園に咲いたエゴノキの花撮影:愛知豊明花き流通協同組合乾燥した場所で生育するノボロギク35 清明、穀雨と、いつの間にか春の節気も最終章、日に日に強まる陽光を受け、初夏の花々が新緑を背景に咲きはじめていますね!「ええ、本当に。そういえば、この時季、近くの植物園に行くと、背の高い木に小さめの白い花がたくさん、ぶら下がるように咲いてるでしょ。ちょっと良い香りで、え〜っと何という木だったかしら?」初夏にたくさんの白い小花が咲く、香りのよい木と言えば卯の花が思い浮かぶけど、背が高いとなると〜?お、それはエゴノキではないでしょうか?「そうそう、エゴノキでした。たしか万葉集に別の名で登場するって看板に書いてありました。」そうですか。では今回はエゴノキのお話ということで。 エゴノキは日本をはじめ、東アジアに広く分布するエゴノキ科エゴノキ属の一種です。万葉集にも「ちさ」の名で詠われ、江戸時代には人形浄瑠璃『伽羅先代萩』に登場する等、古くから日本人の文化にかかわってきた花木です。 エゴノキの花にはいくつかの特徴があり、そのひとつは花に香りがあること。エゴノキ属は中国語で安息香属(アンソクコウゾク)。安息香とはバニラのような強い香りを放つ安息香酸の香りを表す名詞で、エゴノキからもこのような香りがしてきます。また、エゴノキはサクラのように花柄が長く、花は枝から垂れ下がるように咲くので、木が伸びて、高いところで咲いても花を観賞しやすいです。そして、花は一斉に咲き、一斉に花が萎れる傾向が強く、惜しむように花が散っていくサクラに対して、ドライなイメージが感じられます。これらの特徴は万葉集の歌にも読み取れるので、最後に紹介し、今回はお別れです。 おっと、ひとつ言い忘れました。エゴノキの花や果実には「エゴサポニン」という泡立ちやすい毒素が含まれているので、触ったら手を洗ってくださいね!「氣緒爾 念有吾乎 山治左能 花爾香公之 移奴良武」(巻七1360/息の緒に 思へる我れを 山ぢさの 花にか君が うつろひぬらむ/あなたのことを命がけで想っているのに、エゴノキの花がしぼんでしまうように、あなたは急に心変わりしてしまったんですか?)「山萵苣 白露重 浦經 心深 吾戀不止」(巻十一2469/山ぢさの 白露重み うらぶれて 心に深く 我が恋やまず/エゴノキの花が垂れ下がっているように、心沈みつつも、あなたを忘れられない私です。)執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦

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