ホトケノザ写真は筆者撮影春に、陽のあたる道端、空き地や河川敷などでよく見かけるピンク色の小さな花をつける雑草にホトケノザとヒメオドリコソウがあります。どちらも、シソ科オドリコソウ属に属し、よく一緒に群生しているので、花を見ただけでは、なかなか区別はつきません。両種とも花の色や形はピンク色で、シソ科特有の「唇形花」(花びらの先端が上下二片に分かれ、上唇と下唇のように見えます)ですが、花の付き方には違いがあります。ホトケノザは茎けう頂付近の葉の上から飛び出すように咲きますが、ヒメオドリコソウはスペード形の葉の間から花をのぞかせています。また、葉の付き方でも区別できます。両種とも対生(2枚の葉が向かい合ってついている)ですが、ホトケノザは、円形で四角い茎を一周するように葉を付け、ヒメオドリコソウはスペード形の葉が密につまっていて、特に茎頂付近の葉は赤紫色をしています。ちなみに、ホトケノザの名前は、茎を襟巻状に囲んでいる葉が仏様の座るハスの花の台座のように見えることに由来します。文化財保護委員 いちょ鬼頭邦英athaniel Wウォリッチurtis’s Bボタニカル執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦allichがPパフィオペディラムaphiopedilum iインシグネotanical Mマガジーン 雨うすい水、啓けいちつ蟄と、春が日々深まり、あちらこちらで開催されてきたラン展もそろそろシーズン終盤です。「私、今年生まれて初めてラン展に行ってきました。」ほう、そうですか。何かいいものありました?「えぇ。渋めの色合いで、ウツボカズラみたいな花の蘭。え~っと、なんていいましたっけ?」パフィオ?「うん、そうそう、パフィオ。あれって、とても品があって、思い切って買っちゃいました!」ほぉ、それは良い買い物をされましたね~!では、今回はパフィオ、つまりパフィオペディラムについてお話させていただきます。 パフィオペディラム(以降パフィオ)はラン科パフィオペディラム属に分類される種しゅの総称です。パフィオの分布域はインドからオセアニア北部にかけての広範囲であるものの、一つの種が生息する範囲はとても狭く、生息数もごく僅かです。最も絶滅が危惧される種の一つであり、その野生種を輸出入することは国際条約で禁止されています。したがって、私たちがラン展やお花屋さんで手に入れられるものは、すべて条約締結以前に移動されたものか、それ以降原産地にて人口的に栽培・育種されたもの、あるいはそこから増殖・育種されたものに限られます。 パフィオは原種だけで160種以上あり、種しゅごとに性質や形態に大きな差があります。各種それぞれの性質を理解するのは困難ですが、各種を“パービセパラム亜属”とか“多花性タイプ”のような単位で性質を理解すると、いくつかの品種を同時に栽培していても失敗しにくいですね。「クレマチスの・・・系みたいね?」お、まさにその考え方と同じです! パフィオは1819年デンマークの医師Nナサニエルnsigne(当時はCシプリペディウムnsigne)を赴任地のインド・アッサム地方で発見し、イギリスに送ったものが始まりといわれ、その開花した様子がCカーティズagazine (1835)に掲載されています。歴史への登場はまだ200年少々ですが、この間に多くの種が発見され、数多くの優良品種が作出されています。日本においても水みととくがわけ戸徳川家14代当主徳とくがわくになり川圀斉氏をはじめ、昭和以降に多くの育種家が世界に注目される品種を世に送り出し、世界中の蘭愛好家がその栽培を楽しんでいます。 パフィオは大きく分けて、〈年末から春に咲くもの〉と〈春から夏にかけて咲くもの〉の2タイプあります。お花屋さんにこれから咲くものを確認して購入すれば、初めての栽培でも無難に花を咲かせることができると思います。興味のある方はどうぞ挑戦してみてくださいね!ypripedium iインシグネパフィオペディラム‘マユミ’(水戸市植物公園にて筆者撮影)31ヒメオドリコソウホトケノザ
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