広報とよあけ 令和5年2月1日号
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ホシハジロ~市内で見られる世界的な絶滅危きぐ惧種~写真は筆者撮影将来的な絶滅が危きぐ惧される種は、レッドリストやレッドデータブックと呼ばれるもので発表されています。これらには地球規模で絶滅しそうな状況を評価したIUCN(国際自然保護連合)が発行したものから、より狭い地域で日本国内(環境省)、県などの都道府県、名古屋市などの市が発表したものがあります。ホシハジロは過去には三河湾周辺を中心に大群が見られ、県全体で推定数万羽はいたものと思われます。ところが現在では数~数十羽程度の小群を中心に、県内全体で数千羽見られるかどうかのようです。減少は確実ですが、まだ県や日本では絶滅危惧種に選定するほどではないと判断され、市内でも勅使池などで比較的簡単に見ることができます。ところが世界的にはIUCNのレッドリストに掲載されており、将来的な絶滅が心配されています。身近に見られたものが知らないうちに消えていくことはしばしばあることですから、今後の動向に注意が必要な鳥です。豊明市史(自然)執筆員吉鶴 靖則メス勅使池では比較的近距離で楽しめるホシハジロオス  3515611_PIXTA 大寒、その名の通り寒い寒い!でも、今こそが寒さのピーク。あとは暖かくなる一方だと思えば気分も朗らかになるというもの。「そう、もうすぐ立春だし。満作も咲きだすんじゃない?」おっと~、先に言われてしまいましたが、あたりではまだ霜が降りているものの、マンサクの花の時季が始まります。 マンサクはマンサク科マンサク属の総称で、その中の1種「マンサク」は主に東日本から北海道にかけて自生する日本の固有種です。日本の他、中国と北米にも別種があり、街で見かけるものは、このうち中国原産のシナマンサクと他のマンサクとの交配から生じた園芸種であることが多いです。花弁はどれもシュレッダーにかけた紙の屑のような個性的な形です。ちなみにシナマンサクの中国名は「金ジンリューメイ縷梅(きんるばい)」(金の糸のような梅)。花の形状そのものが種名になっています。花弁の色は黄色のものが多いですが、変種や園芸品種によってはオレンジから赤しゃくどういろ銅色のものもあります。 マンサクは日本の固有種であることから、有史以前より日本の山林に生存したことになります。しかし、文献への登場は、現時点では狩かのうつねのぶ野常信の著した『草そうかぎょかいちゅうるいしゃせいず花魚貝虫類写生図』の巻一正月二月に、元禄十七年(1704)の作品が載せられているのが最初で、街中での栽培は江戸時代になってやっと始まったものと推測されます。 マンサクという名称は、他の花木より先に花が咲くことを、自生地である本州北部の訛なまりで「まんずこの花が咲ぐ」と呼んだものが「まんずさく」→「まんさく」となったと言われるのをよく耳にします。この通り、マンサクは開花時期が早く、「春を迎える花」の代表として扱われることが多いですね。ちなみに中国で春を迎える花、いわゆる「迎インチュンフアー春花(げいしゅんか)」とは黄梅(オウバイ)の別名ですが、これに対してシナマンサク(金縷梅)は「忍レンドンフアー冬花(にんとうか)」との異名をいただいています。これは、シナマンサクは葉が枯れた後もその葉が枝に残ったまま冬の寒さに耐え、春を迎える前に残った枯れ葉の間から花が咲き出す姿を称えたもののようです。 それでは最後に、今の上皇后陛下、美智子様が皇后であられた時の「歌うたかいはじめ会始」でお詠みになられたお歌を紹介し、今回はお別れです。この季節、皆様が木々の中に春の息吹を探し出し、新たな春を、また楽しまれることをご祈念申し上げます。  「おほかたの 枯葉は枝に 残りつつ 今日まんさくの 花ひとつ咲く」 (平成23年「歌会始」にて皇后陛下がお詠みになられた歌)執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦枯れ葉が残ったままの枝に咲いたシナマンサクの花

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