広報とよあけ 令和4年11月1日号
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ムラサキシキブ~晩秋の里山に紫の彩り~筆者撮影市内の里山は11月下旬が紅(黄)葉の最盛期ですが、その後は落葉樹が徐々に葉を落とし雑木林は冬の姿に変わっていきます。この晩秋から初冬にかけて雑木林を歩くとあちこちで木の実に出会うことができます。その代表がムラサキシキブです。細い枝のあちこちに直径3㎜ほどの紫色の実が少しず     つ固まって付き、そんな枝がいくつもある様はとても上品な美しさです。平安時代の宮廷女性紫式部を名に冠しているのも「なるほど」と思う雅みやかさですが、名の由来を調べてみると、ムラサキシキミ(シキミとは小さな実のこと)が転じたという説もあるようです。雑木林の周囲など日当たりの良い場所を好み、日陰では実の付きが良くありません。二村山では竹やぶや常緑樹を伐採して明るくすると実生であちこちに生えてきます。あなたの散歩コースに雑木林のまわりがあれば出会うチャンスがありますので、ぜひ探してみてください。なお、ムラサキシキブとして庭に植えられているのは、別種コムラサキであることが多いようです。豊明市史(自然)執筆員やび浅野 守彦 節季は霜降。各地で菊花展がはじまり、中山間地ではそろそろモミジの紅葉がピークとなります。その後立冬を迎えますが、東海道近辺においては、秋はまだまだ終わりません。とても過ごしやすいので、戸外のお花畑やお花の展示会を見に出かけるのもいいですね。 さて、この時季に開催されるお花の展示会の一つに『寒かん蘭らん展てん』なるものがあるのをご存じでしょうか?「寒蘭?ランの仲間?」そうです。「寒蘭ってたしか東洋ランの一種でしょう?」おっ、当たりです! カンラン(寒蘭)はラン科シンビジウム属の一種です。シンビジウム属の内、特に中国または日本の自生種で珍ちん重ちょうされているものを「東洋ラン」と呼んでいますが、カンランもその中に含まれます。東洋ランの内、最も知られているのはシュンラン(春蘭)ですが、専門家によれば、現代の東洋ラン愛好家の多くはカンランにも、はまっているのだとか。その理由はカンランの特徴にあります。 まず、カンランは東洋ランの中でも愛好の歴史が浅いということ。これはその他の東洋ランの多くが宋代以前、つまり1000年以上前から中国で愛好されてきたのに対し、カンランは江戸後期以降に日本の山林で発見されたものが祖と考えられ、まだまだ歴史が浅い分、銘品が愛好家に行き渡っていないようです。また、シュンランは背が低い分、葉も茎もしっかりしており、一茎に一輪の丸みのある花を咲かせるのに対し、カンランは細身で背が高く、一茎に五輪前後の花弁の細長い花を咲かせます。「華きゃ奢しゃなものを好む人も少なくないってことかね?」ええ、このあたりは流行で変わっちゃうんでしょうけど、小ぶりで精せい悍かんなものを好むか、細ほそ面おもてでしなやかなものを好むかの違いって感じですかね?! そして、カンランの最大の特徴は花の「香り」といえるでしょう。他にも香りのあるランは少なくないですが、秋から年末にかけて甘くすっきりとした香りを楽しめます。開花が進むにつれて強く香るようになるので、咲き進むのが楽しみなお花です。もちろん、カンランにも葉に斑が入ったものや葉の形状が変化した、いわゆる「柄がら物もの」はあるし、花の色や柄を楽しめるところは他の東洋ランと同様です。 寒蘭展を実施してる場所はそんなに多く在りませんが、一度ご覧になると、きっと新鮮な気分を味わえますよ~!執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦剣蘭花鏡集(著者、刊年不明)35に著された寒蘭の図(国立国会図書館蔵)雅やかな晩秋のムラサキシキブ

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