広報とよあけ 令和4年10月1日号
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稲作農家が困る!タイヌビエ筆者撮影ヒエにはいくつかの種類がありますが、一般的なものに畑など乾燥した場所を好むイヌビエと湿った水田を好むタイヌビエがあります。タイヌビエは名前のとおり、水田やその周辺に生育します。タイヌビエは、イネに紛まれて生育し、イネよりも早く種子を稔みらせて散布します。種子は稔ると花序の下の部分から脱落し、イネの刈り取り時期にはすでに全ての種子を散布してしまいます。ヒエという名前は「冷え」に由来するともいわれるほど寒さに強く、土質を選びません。大昔はヒエやアワなどが稲や麦が不作のときに代用される救き荒こ作物として食べられていました。田んぼにヒエが生えると、イネの成長に利用される肥料を吸収します。田んぼのヒエは、田植え後、除草剤でいち早く取り除きます。イネとヒエの成長段階の差を利用し、イネを枯らさずにヒエだけを枯らすことができます。除草剤でヒエを取り除くには、田植え後、一週間後の三葉期(3枚の葉)までに除草剤を使用しないと失敗します。豊明市史(自然)編集委員ゅう小笠原 昇一 「ほととぎす~ 鳴きつる方を~ 眺むれば~ ただ有明の~ 月ぞ残れる~」は百人一首81番に登場する後ご徳とく大だい寺じ左のさ大だい臣じんこと藤ふじ原わら実さね定さだの歌。「たしかこの歌の原典は『千せん載ざい集しゅう』でしたわよね?」えぇ、そうです。お詳しいですね!『千載集』の他にも、平安以前の和歌集には、たびたび鳥の「ホトトギス」が登場しています。ホトトギスはその鳴き声が個性的ですが、見た目の特徴としては胸から腹にかけて、白地の羽毛に黒い絞しぼり模様が入るところです。「あなた、さっきから鳥の話をしてらっしゃるけど、お花はどうなさいましたの?」いやいや申し訳ございません。今回は「ホトトギス」というお花を紹介したかったものですから。この花は花弁に絞模様が入るのが特徴で、それが鳥のホトトギスの絞模様に似ていることから、鳥の名をそのままいただいて、花の名前も「ホトトギス」となったようで『大やま和と本ほん草ぞう』「巻まき之の七しち/草そう の さん之三/花か草そう類るい」には「・・・毎萼ニ小紫點多シ杜鵑ノ羽根ニ似タリシホリ染ノ如シ(咢がくごとに小さな紫の点多し、ホトトギスの羽に似た絞染のごとし)・・・」と紹介されています。 ホトトギスはユリ科ホトトギス属に含まれる種しゅの総称(あるいはその一つであるホトトギスという種しゅ)で、日本には多くの固有種が生息しています。8月頃から山林の日陰で咲き始め、開花期の遅いものは11月頃まで咲いています。街の植栽で見かけるものは、ホトトギスとタイワンホトトギス等の交雑から出た園芸種が多く、今頃が見頃です。 花のホトトギスが日本の歴史に登場するのは『花か壇だん綱こう目もく』(延えん宝ぽう9年)で、巻まき之の中ちゅう/郭ほととぎす公の項には「・・・花薄色に紫飛入咲比まへに同(=七月)・・・(花薄色にして、紫飛び入り咲く日前に同じく(7月))」と紹介されています。「鳥のホトトギスが平安以前にたびたび和歌に出て来るのに、どうして日本の固有種のホトトギスは江戸時代まで文献に登場しなかったんですか~?」そうなんです。鳥のホトトギスは8世紀中期刊の万葉集に156首も歌われています。これに対し花のホトトギスが1000年近く遅れて、やっと歴史の舞台に登場というのはとても不思議です。考古学研究がそうであるように、今後この分野の研究が進められる中で、ホトトギスの別の古名が発見されるなどして、その歴史も変わるかもしれませんね! 節気は秋分・寒露と、1年で最も過ごしやすい時期です。ちょっと戸外の空気を吸いに出かける合間を縫って、ホトトギスの花をプチ探検で見つけるのも楽しいですよ~!執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦  のぎ  うイネの収穫量を減らすタイヌビエの穂37(画像提供:筆者)ホトトギスの園芸種

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