広報とよあけ 令和4年9月1日号
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写真は筆者撮影オスの模様をしているオス型メス。産卵行動でメスと気づくことが多い。オスとメスで色、模様、形などの違いがあることを性的二型と呼びます。トンボの場合、多くの種で性的二型となっており、オスとメスの区別がしやすくなっています。ところが不思議なことに、羽化後間もないオスがメスそっくりな色模様の種がいて、成熟するにしたがってオスらしい色模様へと変化する種がいることが知られています。さらにややこしいのは、メスにオスそっくりな色模様の型が出る種も知られています。写真のギンヤンマはオスとメスが繋がって連結産卵している方のメスは通常のメス型メスで、お腹の付け根の太いところの色がオスと異なっていることがわかります。一頭で単独産卵している方はオス型メスで、太いところが水色でオスと同じ色をしていることがわかると思います。オスからしてみれば、メスそっくりな若いオスがいたり、オスそっくりなメスがいたり、非常にまぎらわしいと思います。なぜこのようになったのか、自然の不思議です。豊明市史(自然)執筆員吉鶴 靖則ギンヤンマ~メスの模様が     二型あるトンボ~雌雄で連結産卵しているギンヤンマ。右側がオス、左側がメス型メス。   43シュウカイドウの雄花(左)と雌花(右)(suso / PIXTA、石人 / PIXTA) ヒグラシの声は清流の音にまぎれ、暑気も夕暮れの涼しさでやわらぎはじめています。処暑は蒸し暑さが収まりはじめるものの、ちょっと物悲しくもある節季ですね。 さて、これからしばらくはシュウカイドウが花の盛りを迎えます。シュウカイドウは中国東部からマレー半島に分布するシュウカイドウ科シュウカイドウ属の一種です。日本への伝来は『大やまとほんぞう和本草』巻七、秋しゅうかいどう海棠の項に「…寛かんえいねんじゅうちゅうか永年中中華ヨリ初はじめテ長崎ニ来ルソレヨリ以前ハ本邦ニナシ…」とあることから、江戸時代初頭に中国から渡ってきたと考えられます。 シュウカイドウの特徴は一つの株に雄おばな花と雌めばな花が咲くところ。雄花は2枚の花弁と咢がくべん弁2枚からなり、これが正面を向いて咲きます。これに対し雌花は1~2枚の咢弁だけで、これが下向きにぶら下がっている感じ。雄花はちゃんと一輪の花に見えるけど、雌花はとても弱弱しく見えます。「えっ、咢弁しかなくても花なの?」そうですよ!シュウカイドウの雌花に花弁はありませんが、雌めしべ蕊が備わっており、ちゃんと種たねをつけることができますからね。 シュウカイドウはまず雄花だけが咲き、雄花だけの時期がしばらく続き、その後に雌花が着き始めます。つまり開花期の終わりが近づくにつれ鮮やかな雄花は消失し、貧弱な雌花だけが残っていきます。この様子を清しんちょう朝初期の詩人納ナーランシンドゥ蘭性徳は、詩『臨リンジアンシエン江仙』のなかで、最愛の妻を残して先立つ夫に例えています。その後中華民国の作家秦チンシァンワン襄王によって『秋チゥハーイターン海棠』という小説(悲劇)も表され、近世から近代の中国において、シュウカイドウは悲劇の象徴だったようです。それでは最後に詩『臨江仙』を紹介し、今回はお別れです。今年の秋はシュウカイドウを眺めながらセンチメンタルな気分を味わってみるのも一興かもしれませんよ? 「もう三日三晩雨が降り続いている。いったい誰がこのか弱い妻(秋海棠の雌花)を守ってくれるのか、残念ながら塗り壁の東側は静けさに満ち溢れ、これを助ける人の気配すらない。妻と私(雄花)は引き裂かれ、妻の髪には私の涙がしたたっている。妻を置いて私だけが先に逝いくことが悔やまれる。その時妻は私の死に気づかず、月明かりに照らされる寝所の涼しさを感じているだろうが、幸せは夢のまま消え去る。ようやく待ち焦がれた秋になるというのに、私の心は断腸の思いに満ちている。」(意訳:筆者)「六月阑干三夜雨,倩谁护取娇慵。可怜寂寞粉墙东。已分裙衩绿,犹裹泪绡红。曾记鬓边斜落下,半床凉月惺忪。旧欢如在梦魂中。自然肠欲断,何必更秋风。」執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦

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