広報とよあけ 令和4年7月1日号
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小さい黄色い花を多数つけたコメツブウマゴヤシ筆者撮影コメツブウマゴヤシは、道端、公園、空き地などでよく見かけます。日当たりのよい場所に見られ、一面に多数黄色い花を付けるので、目にとまる植物です。ウマゴヤシは江戸時代に渡来したマメ科植物を言い、馬や牛の餌になり、「馬肥やし」という意味です。和名は小さいコメツブぐらいの黄色い花を付けるので、コメツブウマゴヤシになりました。茎は断面が四角、横に這はい、やや斜上し、毛があります。葉は小さい3小葉があり、小葉は広倒卵形、先端はやや凹頭、葉の先半分だけ鋸歯があります。花は5月から7月ごろまで咲き、コメツブツメクサと似て黄色、全体に小型、20~30個の花がほぼ球形につきます。花後に花序が長くなり、熟すと果実が黒くなって、やや長い総状となります。群落の中に、多くの花があり、よく探すと、果実もあり、長さ約2ミリの腎じ形けで、先が半回転ねじれ、中に一個ずつ種子が入っています。種子は長さ約2ミリ、淡褐色です。コメツブウマゴヤシは、ある程度の大きな群落を形成します。時間をかけ、小さい黄色い花を観察して、つぼみ、花、果実など時間的に変化した様子を、ルーペ(虫メガネ)で観察してはいかがですか。豊明市史(自然)執筆員小笠原 昇一 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」「えっ、またこれ?」はは、この歌は以前『ボタン』『フジ』『シャクヤク』それぞれの回で紹介したので、これが4度目。「ところでこの歌には牡丹と芍薬が登場するから、歌の元は中国なんでしょ?」う~ん、そう思いますよね?でも、その筋の研究によれば、どうやら日本人の作ということです。 さて、夏至をすぎたので、今はあちこちの公園でユリの花を観ることができます。特に森林や丘陵地を利用した公園内に、ヤマユリやスカシユリ等が群植されているところでは、素晴らしい景色が見られることでしょう。「良い香りもしそう!」うん、そうです。品種によって香りの強弱はあるけれど、花の香りも楽しむことができますよ! ユリは東アジア中緯度を中心に、ヨーロッパ、北アメリカに広く分布するユリ科ユリ属の総称で、日本にもヤマユリ、ササユリ、スカシユリ等の固有種があります。 ユリは4世紀にはすでに中国で食用または薬用として栽培されており、南北朝時代梁リアンチャーオ朝の宣シュアンディー帝にその花の美しさが認められ、以降観賞用としても栽培されるようになったといいます。日本においてもその歴史は古く『古事記』中巻において神武天皇が狭さ井い川の近くにある伊い須す気け余よ理り比ひめ売のみ命ことの家を訪ねた折「其河謂佐韋河由者於其河辺山由理草多在故取其山由理草之名号佐韋河也山由理草之本名云佐韋也(その川を佐さ韋い河かわという由よしはその河かはの辺ほとりに山さ由ゆ理りが多く在あり、ゆえに山由理の名を取って佐韋河と号なづくなり。山由理の本もとの名は佐さ韋いなり)」と登場し、『万葉集』巻第十八においても大おお伴ともの家やか持もちが自分に百合の花を贈ってくれた相手に対し「左さ由ゆ理り波は奈な 由ゆ里り毛も安あ波は牟む等と 於お毛も倍へ許こ曽そ 伊い末ま能の麻ま左さ可か母も 宇う流る波は之し美み須す礼れ(百度も会うと書く百合の花の名のように、またお会いしたいからこそ、今この時をこの花で麗しくしたいのです)」とその美しさを歌っています。 「日本のユリも良いけど、わたしの好きなユリはカサブランカかな?」おお、そうですか?ちなみにカサブランカに代表されるオリエンタルハイブリッドは、ヤマユリやカノコユリ等、日本固有のユリがオランダに渡り、それらをもとにして出来上がったものですよ。一年を通してお花屋さんに並べられており、花も大きく見事なものが多いので、ユリといえば、これを思い浮かべる方が多いでしょうね。 これからしばらく暑い日が続きますが、時にはお出かけいただき、森林浴を楽しみながら、日本伝統のユリの花を観賞いただければ幸いです。では、また。執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦森林に咲くヤマユリの花(k-30/PIXTA)道端で群落をつくるコメツブウマゴヤシ   んい  37

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