広報とよあけ 令和4年2月1日号
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 地球温暖化とは言われるものの、それでも冬は寒いもの。これから節気が立春、雨水と進むにつれて、春らしくなるのが待ち遠しいですね。「うん。立春になっても、実際は冬だからね~」そうですね、まだまだ寒いので、なかなか戸外で花を楽しむというのもおっくうですね。でも、2月も末あたりになると、俄にわかに香り立つ花が咲き始めるのをご存知でしょうか?「へぇ?何の花かね?」それはジンチョウゲの花です。 ジンチョウゲはジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木で、原産地は中国です。中国での名称は「瑞ルイシャン香」で、1578年完成の『本ベンツァーオガンムー草綱目』第14巻「芳ファンツァーオメン草門」の項に「南方の山中の所々に繁茂する。長く柔らかく厚い葉、常緑で冬から春の変わり目に花が径10cmほどの球状にまとまり、これをたくさん着ける。チョウジに似た花が咲き、色は黄白紫の三色ある。『格グァグールン古論』によれば背の高い木は1~1.5m…そのうち枝がうねるタイプは花が紫で、この種類だけに強い香りがある。…原生地は廬山で、宋の時代から人々に知られ、家に植えられるようになった。…」と紹介されています。いくつかある瑞香のうち「強い香りがする紫の花の咲く種」が日本に伝わり「沈じんちょうげ丁花」と呼ばれるようになったんですね。『大やまとほんぞう和本草』(貝原益軒、宝永6年)の「木之下 花木」の項にはジンチョウゲの由来と栽培指南が紹介されていることから、江戸時代初期にはすでに日本に渡来していたことが判ります。 ジンチョウゲの特徴の最たるところは、やはりその香りでしょう。以前に香りのよい木の代表としてキンモクセイを紹介したことがありますが、キンモクセイが東の正横綱なら、ジンチョウゲは西の正横綱。まだ寒いので、香りが伝わりづらいはずなのに、この木の近くを通るとしっかり匂ってきます。それでは最後に宋代の詩人曹ツァオシュン勛がジンチョウゲの花を歌った詩『花フアーシンドン心動・瑞ルイシャン香』をご紹介して今回はお別れです。 「井戸の底から寒気が立ち上り、楓の葉は呉ご江こうに落ち、寝所を囲む御簾の中にも冷たい空気が染みこんできた。瑞ずい香こうの葉が羽毛の形をとり、紫の花が一つにまとまると、部屋の中は優しい香りで満たされた。麝じゃ香こうにも劣ることのない芳醇な香りが、廊下の空間に匂いあふれている。寝転んで燕に目をやれば、そこには色とりどりの美しい風景が広がっている。生垣にも花の香りが漂い、蜂と蝶は舞うが、かれらには花と咢の区別がついていない。窓を通して、日々思い思いの景色を眺めているうちに、建けん春しゅん門もんの春が深まっていく。悲しい気持ちが最も高ぶったところで、夢から戻り、酔いも覚めた。楚の梅は早く咲き、知らぬ間に散り落ちてしまったようだ。」(意訳:筆者)(玉井生寒,正枫落吴江,冷侵罗幕。翠云翦叶,紫锦攒花,暗香遍熏珠阁。非兰麝比,氤氲清彻寥廊。向燕寝,团团秀色,巧宜围却。宝槛浓开对列,蜂共蝶多情,未知花萼。爱玩置向窗几,时时更碾,建春浇著。最是关情处,惊梦回、酒醒初觉。楚梅早,前村任他暗落。) 執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦ジンチョウゲ(shins/shutterstock)花に見えるのはガク弁 都市近郊で人口が急増した1960年代、身近な川は水質汚濁が急激に進行していました。前後駅の南を流れる皆瀬川もどぶ川となり、川とは汚い所という意識が生まれました。流れでゆらゆらと揺れる白いぶよぶよしたワタ状のものが川底一面に生えてぬるぬるになり、またそれがちぎれては流れ、とても川に入る気になれませんでした。 これはミズワタ(スフェロティルス)という名のバクテリアで、BOD(生物化学的酸素要求量)10PPM以上の汚れた川の指標生物です。豊明市による皆瀬川の水質測定によればBODは年平均15〜30PPM程度で推移してきました。 一方、1990年代から下水道整備が進み、皆瀬川流域でも2005年には現在の整備水準に達しました。それとともに水質は改善し、BODは2003年以降10PPMを超えることはなくなり現在では5PPMを下回るまでに浄化されました。私が皆瀬川でミズワタを見たのも2002年が最後です。 カワセミやハグロトンボが住むよみがえった川よ永遠なれ!豊明市史(自然)執筆員浅野 守彦ミズワタ〜下水道普及で姿を消した汚れの指標生物〜流れにゆれるミズワタ(市外で撮影)筆者撮影(豊明市資料より筆者作成)下水道普及率(%)BOD(ppm)39

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