広報とよあけ 令和3年11月1日号
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 節気は寒露、霜降とたどり、もう冬はそこまで来ています。「わっ、ちょっと前まで熱中症危険アラートとか言っていたのに、あっという間に冬になっちゃった。」本当、季節の移り変わりは早いですね~。さて、ここで皆さんに質問。日本人にとって冬を代表する樹って何だと思います?「そりゃ~松でしょ!なんといっても正月の門松ってくらいだから。」ブブー、違います。「では何ですの?」答えはヒイラギです。なぜならヒイラギを漢字で書くと「柊」。木き偏へんに冬って書くでしょ?!「何だ。そういう系の問題か?」はは、ご無礼しました。ちなみに冬の代表の樹がヒイラギなら、春夏秋冬それぞれは何かというと。これについては小おののたかむら野篁(そう、百人一首の第11番に登場する参さんぎのたかむら議篁です)の名を冠した『小おののたかむらうたじづくし野篁歌字尽』(近こん八はち郎ろう右えもん衛門、明治19年)の冒頭に「春椿 夏は榎えのきに 秋楸ひさぎ 冬は柊 同じくは桐」と紹介されています。これを暗唱すれば覚えられますね? ヒイラギはモクセイ科モクセイ属に含まれる種しゅで、日本の本州以南および台湾に自生する常緑樹です。その歴史は古く、『古事記(723年)』中巻『大おおたらしひこおしろわけのすめらみこと帯日子淤斯和氣天皇(景けいこうてんのう行天皇)』に、天すめらみこと皇が倭やまとたけるのみこと建命に東征を命じた折「給比比羅木之八尋矛(柊ひいらぎの八やいろのほこ尋矛を給たまう)」と登場しています。「へぇ?ヒイラギってクリスマスベルの装飾に使われてるからヨーロッパのものだと思ってたよ!」おっと!いいとこ突いていただきました。クリスマスに関りの深いヒイラギは、正式には「セイヨウヒイラギ」といいます。セイヨウヒイラギはヨーロッパを中心に分布するモチノキ科の種しゅで、愛称は「クリスマスホーリー」、ここで紹介しているヒイラギとは全くの別物です。ちなみにセイヨウヒイラギの花は5月ごろ咲き、実は赤色で秋から冬にかけて実るのに対し、ヒイラギの花は11月前後に咲いて、実は濃紺で冬から初夏にかけて実ります。その他、セイヨウヒイラギの花に香りはないけれど、ヒイラギはキンモクセイと同じ属だけあって、キンモクセイのような良い香りがします。 少々肌寒さを感じるものの、晴天の昼間はまだ気持ちの良い戸外。花は小さく地味ですが、かすかな香りを頼りにヒイラギの花を見つけてみましょう!執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦花は地味だけど香りのよいヒイラギの花画像(Traction/shutterstock) キツネノマゴは道端に生える小柄な雑草です。やや湿ったところを好み、夏に赤紫の可愛い小さな花をつけます。 茎は根元がやや横に這はい、分枝してやや立ち上がります。高さは10~40㎝程度、茎は下向きの短い毛が生えています。茎には節があり、節ごとに葉を二枚付けています。これを対たいせい生と言います。葉は長さが2~4㎝、短い柄があって卵形で柔らかく、先端は少しとがっています。葉の両面に細かい毛が生えています。 花は8~10月ころ、茎の先端から穂ほ状じょう花か序じょを出します。花序には花が密につき、それぞれの花は基部に苞ほうがあるので、外見ではその苞ほうが並んだ棒状の姿に見えます。花は唇しん花か型がたで、上じょう唇しんは小さく三角形で、先端は二裂、下か唇しんは丸く広がって反り、先端は三裂、全体は白ですが、下唇が広く赤紫なので、赤紫の花との印象が強いようです。 名前の由来はよく分かっていません。花序が花の咲いたあとに伸びるのがキツネの尾のようだとか、花の形がキツネの顔を思わせるからなどの説もありますが、根拠に乏しいようです。豊明市史(自然)編集員小笠原 昇一赤紫の可愛い小さな花をつけるキツネノマゴ湿った場所を好むキツネノマゴ筆者撮影33

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