広報とよあけ 令和3年9月1日号
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 やっと猛暑をやり過ごすことはできたものの、まだまだ昼間の蒸し暑さはなくなりませんね。「ええ。午後にひと汗かいた後には、冷えた麦茶と葛餅があれば最高ですね。」まさにまさに。ところで、葛餅は葛粉からつくられていることは皆さんよくご存じかと思いますが、クズの花についてはあまり知られていないと思います。「えっ?葛餅のクズって植物の名前なの?」そうですよ。クズはクズでも観賞に値する花が咲きます。「でも、どうしてクズなんて名前にしちゃったのかしら?ちょっとクズがかわいそうじゃない?」はは、それなんですが。この「クズ」という音は「葛くず」の中国語が「グ」または「グァ」のような音であることや、奈良時代にクズの収穫が盛んであった地名が「国くず栖」と呼ばれる地域であったことに起因しているようで、現代我々が「あまりカス」などを意味するときに使う「屑くず」とは無関係のようです。 クズはマメ科クズ属のつる性多年草で、日本を含む東アジアから東南アジアに自生しています。古くは『日本書紀』巻27「天智天皇」に「阿あ箇か悟ご馬ま能の以い喩ゆ企き波は々ば箇か屢る麻ま矩く儒ず播は羅ら奈な爾に能の都つ底て舉ご騰と多た拕だ尼に之し曳よ鶏け武む 其三」(赤あか駒ごまのい行ゆき憚はばかる真ま葛くず原はら、何の伝つて言ごと、直ただにし良よけむ その三)と、野道を塞ぐほど繁茂する植物という姿で登場し、その後『万葉集』巻8(1537)には山上憶良が秋の野に咲く花、七種を詠んだ歌に「茅之花乎花葛花瞿麥之花姫部志又藤袴朝貌之花」(萩の花、尾を花ばな、葛くす花はな、撫なてしこ子の花、女おみなへし郎花、また藤ふち袴はかま、朝あさ顔かほの花)と花の名称の一つとして表されています。その後も古今和歌集、枕草子、源氏物語と日本の歴史・文学の節々に登場し、薬効も認められ、現代においてもクズは和菓子には欠かせない日本伝統の植物です。 しかし、クズは繁殖力が強い雑草として厄介者にされる場合が多いです。うまく使えば有用だけど、それを使わないところでは周りから反感を買ってしまう植物でもあるわけです。クズはあくまでも栽培するものではなく、山野で開花しているのを楽しむ植物なんですね。クズを観賞するには、この時期、野山に散歩に行く必要があります。可能であればちょっとお出かけしてみましょう! 執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦蔓を伸ばしながら咲くクズの花画像提供:いがぐり/ PIXTA 二〇一二年、驚きょう愕がくの事実が判明しました。外来種と思われるハラビロカマキリの侵入で、在来種のハラビロカマキリが絶滅寸前に陥っている地域が愛知県で見つかったのでした。発見時は外来種の名前も影響力も詳細は不明で、確実と思われたのは在来種のハラビロカマキリが危機的状況になることが容易に想像できたことでした。 この外来種は今ではムネアカハラビロカマキリと呼ばれています。在来種に比べて大柄で、侵入した地域では驚くべき速さで在来種を駆く逐ちくしていき、いつの間にか在来種がいなくなっているということに気づくことになります。すでに豊田市や名古屋市などでほぼ入れ替わった地域があります。豊明市で調査した範囲では二〇一九年には沓くつ掛かけ城じょうし址公園などで在来種は健在でしたが、外来種は見つからず、安心したものです。在来種が絶滅危き惧ぐ種とならないよう祈ると共に、外来種との競争に負けないようにがんばってもらいたいと切に思います。豊明市史(自然)執筆員吉鶴 靖則ハラビロカマキリ〜在来種よ、がんばれ〜ハラビロカマキリ在来種のハラビロカマキリは胸が短く、カマの付け根には黄色の突起がある(赤矢印)。ムネアカハラビロカマキリ外来種のムネアカハラビロカマキリは胸がオオカマキリのように長くて裏側の赤みが強く(青矢印)、カマの付け根に小さなトゲが多い(赤矢印)。写真は筆者撮影37

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