広報とよあけ 令和3年5月1日号
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 おおかたの木は芽吹きを終え、あたりは新緑に包まれています。あっという間に春が過ぎ、もう初夏なんですね。これからは田植えのシーズンでもあり、田園地帯では耕運機や田植機が、ここぞと活躍する姿が見られることでしょう。 この時期、所々でちょっと見上げるような位置に綺麗な薄紫色の花を目にすることはありませんか?「ええ、もちろんですわ。藤の花でしょ?」おっと、確かにフジの花は紫色で見上げる位置に咲いてますね。質問の答えとしては大正解です。でも、実は私が答えてほしかったのはキリの花です。「キリ?キリって高級箪たんす笥の材料になる桐のこと?」そうです。そのキリです。「『五山の桐』とか紋章にも使われてるよね?」「名前はよく知ってるけど、キリってどんな花でしたかね?」まさにまさに、名前や図柄は知ってるけど、実際はどんな花か分かっていない代表選手のようなキリの花ですね。 キリはゴマノハグサ科キリ属の落葉高木で、中国の他、日本の一部にも自生しています。キリの木は成長が早く、また軽く、燃えづらいなどの利点から高級木材として重宝され、かつては女の子が生まれると家の庭にキリを植え、結婚する際にはその木を切って嫁入り道具にしていた話はよく耳にされることと思います。 キリの歴史は古く、すでに奈良時代には和琴の素材として実用されています。また『枕草子』の「木の花は」には「桐の花、紫に咲きたるは、なをおかしきを、葉のひろごりざまうたてあれど…」と花の色が称えられ、源氏物語においては宮中五舎のうち、光源氏の母親が住まう淑しげいさ景舎の愛称「桐きり壺つぼ」として登場し、これをもって母親は「桐壺の更衣」、帝は「桐壺帝」、物語の第一章が『桐壺』と、キリのオンパレードです。 さて、キリの花はどんな花でしょうか?キリの花はこのように薄い紫色で、花の形はノウゼンカズラを大きくしたようなラッパ形で、これが枝の先に房となって咲きます。早く背が高くなるため、個人宅の庭に植えられた木であっても、花が咲くと通りから眺められる場合が多いと思います。散歩中ご近所でキリの花を見かけたら、どうぞそのお家の方に怪しまれないよう十分にご配慮の上ご観賞ください。執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦 ノビル(野蒜)は、ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属の多年草です。日当たりのよい土手や道端に生える野草で、全体の姿や臭いはニラに似ています。花にできるムカゴ(肉芽)は落ちて、土の中で芽を出し、増殖します。 東アジアに広く分布し、日本では北海道から沖縄まで分布し、丈の低い草が生えているところによく自生します。 地下に鱗りん茎けいを持ち、地上に細い葉を伸ばします。葉は線形で二十~三十センチで、数本出します。葉は柔らかく中空の筒状で、表面に白い粉をふいているような白みを帯びます。花期は初夏5月ごろで、まっすぐ立ち上がり四十から六十センチに達する花茎を一本だけ伸ばし、先端に花序(散形花序)をつけ、白色または淡紅紫色を帯びます。 葉とともに、地下にできる鱗茎が食用となります。鱗茎は地下五センチより深い位置にできるため、スコップなどで掘り、食用にされ、タマネギに似た香りと辛味があり、独特な香味を持ちます。豊明市史(自然)編集員小笠原昇一ノビルの花ノビルの鱗茎写真は筆者撮影河川敷や道路端、 空き地によく生える  ノビル(野蒜)琵琶湖の周辺に咲くキリの花(筆者撮影)33

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